アマネギムナジウムを読んでほしい
アマネギムナジウムという漫画がある。
作者は「ライチ☆光クラブ」「帝一の國」でお馴染みの古屋兎丸先生である。
メチャクチャめんどくさく拗らせたカワイイ少年達の人間関係を書かせたら最強と名高い古屋兎丸先生である。
当ブログを開いたのは、そんなヤバイ少年を書く古屋兎丸先生のヤバイ新作がどういうわけかまったく世に知られていない現状を嘆いたからであり、私はアマネギムナジウムを全人類(特に拗らせた少年が大好きな諸姉)に読んでほしいと思っている。
試し読みページ
http://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000018921
物語は主人公宮方天音(27歳派遣女性彼氏いない歴=年齢)が「生きている人形」を作ってしまうところから始まる。
肩書きに相応しく内面も立派に拗らせた天音はドール制作に手を出していて、その腕前は展覧会でも人気を博すほど。しかしなかなかドールで食べていくことはできず、普段は派遣業で細々と食い繋いでいる。
そんな彼女がふとしたことから魔法の粘土を手に入れ、中学生の頃から考えていた七人の少年達をドールとして作ることを決意する。少年達は古き良き耽美少女漫画に影響された世界を生きており、1970年のドイツ・ケルン郊外の名門校で学んでいる。設定のガバガバ感は中学生クオリティだから仕方ないのである。
そしてなんやかんやの末、少年人形達が動きだし、天音は現実世界と空想のギムナジウムを行き来しながら少年達と触れ合うようになるのだが…。
この漫画を一言で言うと地獄である。人間関係の地獄である。
アマネギムナジウムの少年達は全寮制男子校で暮らす中学生程の子供である。この手の漫画に馴染みがある方はお察しであろうが、少年達は七人というハチャメチャに狭い人間関係の中で衝突し愛憎するのである。
少年同士で愛憎するのである。
中学時代の天音はドブズブに腐っており、萩尾望都や竹宮惠子に影響を受けた結果少年達にBL設定をつけていたのである。少年同士の三角関係、少年同士の嫉妬からの憎悪、少年の葛藤からの発狂、挙げ句の果てには少年のうちの一人が両性具有で少女の性器と心を持ってしまっている。
これがtwitterで見かけるリアル中学生の創作なら半笑いで見守れるが、アマネギムナジウムではそれが創作者天音の前で繰り広げられるのである。中学時代の迂闊なはっちゃけ黒歴史がそのまま生の人間(人形)によって再現されるのである。
地獄である。
もちろん色々な意味でそんなもん見てられない天音はなんとか少年達の人間関係を修復させようと奔走するが、拗れに拗れた少年達の心がそう簡単になんとかできるわけもなく、事態はどんどん悪化していく…
ここまで読んでくださった拗らせ少年大好き諸姉はこの状況に何か感じるところがあるかもしれない。中学時代に書いた黒歴史創作で欲望のままにドロ闇な設定を生やした少年達を思い出し泥血を吐いたことであろう。
主人公天音はどうしようもなくダメな女性でダメなオタクだが、それ故に我々は感情移入してしまう。深く考えずにつけてしまった設定。自身の対人経験がクソクソなため全然事態を解決できずのたうち回る。締め切りに追われ周囲に醜態を晒しながら創作する限界クリエイター。
我々は宮方天音を笑えない。我々がもし宮方天音になったとき、自分が作り愛した世界を現実に創ってしまったとき、我々は宮方天音よりスマートに事態を解決できるだろうか。血みどろ、泥沼、闇深な世界観に巻き込まれひたすら懊悩するだけではなかろうか。
アマネギムナジウム。かつて創作する中学生だったすべての諸姉に見てほしい。そしてダメダメな天音に呆れながらも没入し、自身の黒歴史に想いを馳せながら、少年達が繰り広げる地獄を見守ってほしい。
アマネギムナジウム三巻は6/22発売です。